そんなお前が好きだった3

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「きらいなんだよ、手袋とか」
「わがままなんだから」
 元気は柔らかく笑い、熱いカフェオレを響の前に置いた。
 年下のくせに、小さな喫茶店でも一国一城の主である元気の方が自分よりしっかりしているし大人だと響は思う。
 高校時代から元気の学年には、何故か自分を持ったやたらしっかりした生徒がいた。
 筆頭の元気はサッカー部やスキー部に籍を置き、アルペン競技でインターハイにも出場すると思えば文化祭にはバンドを率いてギターを披露するしで、その容貌も手伝って女子生徒に騒がれる、とにかく目立つ連中の一人だった。
 今、響と同じく母校で美術の講師をしている東も文化祭にどでかい絵を描いて庭に置いて教員たちと大喧嘩したりと、また別の面で独立独歩、注目を浴びていた。
 卒業式に出たせいか、ふっと当時の情景が脳裏を掠め、響はそんな自分に苛立ちを覚える。
  -さらば友よ!
 卒業する響が、惰性でみんなのあとに続いて校門への道に立った時、寒とした空気を震わせて生徒会長のはっきりと通る声が響き渡った。
 ……あいつも騒がれたうちのひとりだったな。
   友よ、いずれの日にか山窮水尽の地に立ちて、己が道を顧みるとき、
   思い出さんかな、限りなき理想をともに追いし日々を
   友よ、忘るなかれ、今ここに歌いし別離を……
 時の生徒会長の重々しい内容の掛け声に続いて在校生による伝統のしめやかな別れの歌が続く。
 戦前にはドイツの学校と交流があったらしく、何故かドイツ語が混じっている。
 卒業式が終わったあと、門までの道に立って卒業生を送るこの儀式は今日に至っても未だに続いている。
 この呼びかけの言葉を、クサすぎる、と響は言い捨てる。
「俺も当時はそう思ってたな。歌もマイナーで暗いし。何かテレみたいなものもあって、卒業式も大騒ぎしましたけどね、思い返すと妙に厳粛な気分になって、騒いで申し訳なかったかな、なんてね」
 元気は響を諭すでもなく、独り言のように言った。

 


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