そんなお前が好きだった4

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 卒業生を送る別れの歌にしても古きよき時代の名残とはいい難く、戦地に赴く学友を送り出した悲壮な思いが背後にあったという話も聞く。
 響も口ではバカにしたことを言ってみるものの、実のところ忘れることができないのがもどかしいくらいだ。
 だから、卒業式なんか嫌いなんだ。
「そういや、響さんたちの卒業の時って、俺ら送る側、井原のやつがメチャ、マジだったんで、俺らまで背筋のばしちゃって、いつもの儀式なのに妙に真剣だった気がするな」
 元気の口から、なるべく思い出したくなかった当時の生徒会長の名前を言われて、響は心の中でたじろぐ。
「響さん、音楽部で一緒だったでしょ? 井原と卒業してから会いました?」
 問われて響は言葉に詰まる。
「いや」
「え、そう? 井原のやつ、大学行ったら絶対響さんとまたセッション組むんだとか、言ってたのにな」
 響は思いがけない話に元気の顔を見上げる。
「まあ、ガチでピアニスト目指す人と趣味でやってるやつらじゃ、無理ってもんか。俺も大学時代はたまに会ってたりしたけど、ほら、あいつ、お星様狂いで留学しちまったし、俺もバンドとかやってたからお互いあれから会ってなくて。あいつ、まだ留学してんのかな」
「留学……って、どこに?」
「イエール大って言ってたかな」
「へ…え」
 あいつ、日本にいないんだ。
 だからって、何でガッカリするんだよ、俺は。
 響は自分に突っ込みを入れる。
 あいつ、井原の声は今も耳に残っている。
 あの時、はじかれるように顔を上げると、真っ直ぐな視線が響の目に飛び込んできた。
 響はそれをそらすことができず、立ち竦んでいた。
 ふう、と響は息をつく。

 


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