そんなお前が好きだった5

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 それももう昔の話だ。
 卒業以来会うこともなければ、消息も知らない。
 だが、この街に戻り、はからずも母校の講師の仕事を依頼され、つい受けてしまったのは、やはりあいつの残像をつい追ってしまったからだろうか。
 バカな話だ。
 隅のテーブルにいた客がレジに立つ。
 ありがとうございました、と元気が二人を見送ると、店内は二人だけになる。
「そういえば紀ちゃんは?」
「彼氏と旅行」
 いつもはアルバイトの紀子が賑やかに元気をアシストしているが、今日は朝から一人でてんてこ舞いだ。
 だが、あくせくしてるようには見えないのが元気の不思議なところだ。
「んで、お前のカレシはまた海外とか?」
 元気はすました顔をしているが、目をすっと細めた。
「カレシとか、東のマネ、しないでください」
「だって、事実だろ? 今のご時世、あっけらかんと男男交際、いいんじゃね?」
「俺は別にあっけらかんとかしてません」
 郷里に戻った元気を追いかけて近所に移り住んだという新進気鋭のカメラマン豪は、はっきり言って周りのことなどお構いなしに、元気に首ったけだ。
 わざわざ説明が必要ないほど、一目瞭然である。
「お前らの学年もだけど、俺のいっこ上の学年もパワフルだったから今でも語り草になっているやついるよな。サッカー部の松田とか、生徒会長やったすげー女いただろ、高原だっけ? それに比べると俺らの学年は地味でネクラで、思い出すやつなんかいない」
 熱いカフェオレを飲みながら、響はさりげなく話題を変えてみる。
「響さんだって目立ってたじゃないですか。文化祭で華麗なピアノ、覚えてますよ」
「あれは……井原のやつに無理やりのせられただけだ」
 自分で井原の話に戻ってどうする、と響はまた自分で突っ込みを入れる。

 


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