そんなお前が好きだった75

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 流れている曲は古いアメリカのロックのようだ。
「ここは角部屋ですし、広々としたリビングは二〇畳あります。キッチンもこじんまりとしてますが、カウンター式で使い勝手がいいと思いますよ。こちらの洋室はウォークインクローゼットもついて寝室としてお使いいただけます」
 不動産屋が最初に案内してくれたのは、学校から車で約十二分ほど、三階建てアパートの二階だ。
 バルコニーからの見晴らしもいい。
 無論駐車場もありだ。
「リビングは全面掃き出し窓で明るいですし、これで六万円ちょいはお安いと思いますよ」
 五十がらみの不動産屋は一押しだという。
「結構広いんじゃないか。日本のアパートとしては」
 響はあちこち歩いて回って、このくらいあれば自分も暮らせるかもと思う。
 ただし、防音設備ないからな。
 共同住宅でピアノは難しいよな。
「そうだな。ちょっと天井が低い気がするけど」
 井原は上を見上げて言った。
 確かに井原の身長だと、天井が近いかも知れないが。
「日本の住宅なんて普通こんなもんだろ。天井のことをいえば、自分ちの方がいいんじゃないか?」
 井原の家は、父親が建てた築二十年ほどの吹き抜けのある居心地のよさそうな家だ。
 ただ、井原の部屋は六畳ほどだから、手狭と言えばそうかも知れない。
「本が山積みでさ、俺の部屋、今」
 とりあえずもう一軒見ることになっていた。
 不動産屋の案内で次に向かったのは、方向的には街の逆側になるが、高校から車で約五分ほどのところに建つ、平屋の一軒家だった。
 裏は細い道を挟んでなだらかな山になっており、前と横は田畑だ。
 隣との距離がある。
 三LDKで六万、駐車場ありという破格な物件だ。
「事故物件とか?」

 


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