そんなお前が好きだった77

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 祖父は粋なところがある紳士だったが、父親は見事なくらい堅物で考え方が偏っていて、ほんとに父親と祖父は親子かと思うくらい性格も人となりも違っていた。
 もう祖父がいないことを再確認すると、響の胸中に寂しさが去来する。
「おじいさん、残念でしたね」
「祖父は父が大学に入る頃まで、横浜で商社をやっていたらしくて、やはり親が亡くなってこちらに戻ってきたらしい。こっちに来てからは何か、東京の知人に頼まれて翻訳みたいなことをやっていたようだけど、生涯悠々自適で生きたみたいな人だったよ」
 残してくれたのはモノばかりではない。
 今でも祖父の温かい言葉が響の中にある。
 そんなことを話しているうちにランチのバーガーセットが運ばれた。
「げ、でかくない?」
「これしき、大丈夫ですよ」
 井原はすぐさま大きなハンバーガーにかぶりついた。
 響も一瞬迷いながらも何とかほおばった。
 ボリューム満点のポテトやサラダまで井原はガツガツと見事に平らげた。
 ソースを口元につけながら笑う井原は高校生の頃と変わりなく屈託がない。
「美味かった~」
 口に出して言う井原に、周りに座っていた女性陣がくすくす笑う。
「さすがにこっちのが本家より美味いっすよ、パテが違う」
「うん、確かに美味かったな」
 響も遅ればせながらセットを食べきった。
「さあて、腹ごなしにちょっとドライブしません?」
「ドライブ? どこへ?」
「いやあ、もう何年振りかだから、どこへでも」
 そう言いながらも、井原は北アルプスへ続く道を上っていく。
「おい、この車、スタッドレス履いてるのか?」
「そりゃもちろん。まだまだ上の方は雪があったりしますからね」
 さらに上がると、断崖絶壁の道を走った先に温泉がある。
「今日はちょっと時間もないけど、今度温泉巡りしましょうよ。この辺り結構たくさんありますよね」

 


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