そんなお前が好きだった80

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「あ、響さん、いらっしゃい、何か久しぶりっすね」
 ムスっとした顔が響を認めて破顔した。
「だな。こっちにはいつまで?」
「昨日来て、月曜の朝には戻んないと」
「忙しいな」
 ガッシリ体系、短く刈り込んだ髪、どちらかというといかつい顔だが、笑うと目尻が下がって、人の好さそうな表情になる。
 背丈は俺と一緒くらいか?
 響の横に座って何やら仲良さそうに話している男を、井原は値踏みした。
「初めてだったな、こいつ、豪。こっちが春に母校の教員になった井原」
 元気が豪と呼ばれた男を井原に紹介した。
「井原さん? すげえボーカルだって聞きましたよ。初めまして。坂之上豪です」
 マウントを取ってやろうかとすら思った男はそれでも愛想よく井原に自己紹介した。
「世界を股にかけた新進カメラマンってやつ? いい写真撮ってるよ」
 ただまたしても響が嬉しそうにそんなことを言うので、何だよこいつ、と井原はちょっと眉を顰める。
「へえ、報道カメラマン? 戦地とかもいくわけ?」
「いや、まあ、行けと言われればですが、今はなるべく生きて帰ってこられるようなところの仕事やってます」
 へへへ、と豪は恥ずかし気に笑った。
「あ、元気、俺、ちょっとデータ整理するんで、今夜路傍でいいか?」
「ああ」
「あっと、そういや、みっちゃんがまた来るってほんとかよ」
 店を出て行きかけてまた戻ってきた豪が言った。
「知らないよ、とっとと行け」
 豪は響と井原にちょっと目で挨拶しなおして店を出て行った。
「ん? なあ元気、今の豪って………」

 


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