そんなお前が好きだった86

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 眉を顰めて井原は拳を握りしめる。
「へえ、それで響さんそいつとどっか行ったわけ?」
「いや、何か言い争ってたみたいだが、響さんが追い返した。ドイツ語!」
「は?」
「何で俺ドイツ語やってないんだろ!!! くそ!」
 ドン、と井原はカウンターを拳で叩く。
「カウンター壊すな!」
 すかさず元気に叱責されつつも井原はグラスを差し出した。
「もう一杯くれ」
「ドイツ語がどうしたって?」
 とりあえずグラスに酒を注ぎ、元気は聞いた。
「あの金髪男! 俺がわからないと思ってドイツ語なんかで話しやがって! 」
「ドイツ人だったら仕方ないだろう」
「くっそおおおお!」
「喚くな!」
 井原は怒鳴りつける元気もなんのそので、またグラスをゴクゴクと飲み干した。
「もう晩飯の時間だろう、家に帰らなくていいのか?」
「あ、元気、何気に俺のことウザがってるな!」
 ちょっと酔いが回っているらしい。
「もう、店閉めようと思ってたんだよ」
「あ、そういやなんか、さっきの豪ってやつと約束してたよな? 飲み行くのか? クソ、お前らばっか、俺も混ぜろよ!」
 迷ったものの、ここで粘られても困ると思った元気はタクシーを呼ぶと、井原連れで路傍に向かった。
 豪の住む町への道路沿いにある路傍は、古民家を改造した隠れ家的居酒屋だが、元気や豪の行きつけで、友人を連れてくるならここと決めている。


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