そんなお前が好きだった89

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 元気は眉根を寄せる。
「うーん、そんなことあったのか。江藤先生に挨拶にいったら、全然昔通り、明るかったぞ」
「まあ、それがさ、秀喜も実は割とすぐに離婚して、結局、秀喜家出てまた江藤先生と付き合い始めて」
 元気は笑った。
「秋に正式に結婚式するらしいけど、近々籍入れるってよ」
「何だそれ、めでたいじゃないかよ」
 井原は冷酒をぐいぐい空けてかなり酔っているので、声がでかい。
「そうなんだよ、でさ、仲間で先にウェディングパーティやろうって話になってるわけさ」
「しかし何だって、そんな回り道になったんだ?」
「そりゃ、家の格式だの、年がどうのと、両方の親がうるさかったからな」
「つまんねえこだわり」
 井原がすぱっと言い放つ。
「まあな、実際つまんないってわかってても、うるさいやつらがいるわけさ。秀喜の結婚相手ってのがどっかの良家の子女って話だったのが、実は元カレと切れてないわ、遊び人だわってのがわかったし、姉が娘連れて戻ってきてさ、これがまたしっかりした子で、その子に女将をつがせるってことになって、秀喜は経営者に納まったっつう話」
 元気は鮎をつつきながら、「俺の店で」と付け加えた。
「元気の店でか? またライブやる?」
「お前は! まあ、やる予定だけどまだ詳細は未定だ。今度みんなで話すことになってる」
「わかった、俺も混ぜろよ! いや、秀喜も苦労したんだな。しかし純愛貫いたか、いい話じゃん。うん」
 井原は一人悦に入っている。
「しかし、何? そんな話、この界隈じゃみんな知ってる話とか?」
 改めて井原が確認する。
「あたりまえだろ? この狭い街で、こそこそやってもどっかで誰かが見てるんだよ。で、あっという間に噂は広がる」
「そんなに? あっという間に? え、じゃ俺のことも?」
 それまで黙って二人の高校時代の話を聞いていた豪が、口を挟む。
「ああ、とっくだろ?」
 サラリと元気は答えた。
「ええ、そうなのか? 元気のお母さんも知ってるとか?」

 


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