そんなお前が好きだった90

back  next  top  Novels


 少し焦り気味に豪は言い募る。
「みたいだぜ?」
「みたいってそんな、無責任な」
 豪はふう、と大きな溜息をついた。
「お前、さっき姉貴から電話来た時、坂之上豪って知ってるかって聞いたら、芸能人並みに人気あるらしいじゃん、界隈どころか日本中知れ渡ってるんじゃないのかよ? イケメンカメラマンとかって」
「いや、それは、いんすけど…………」
 豪は井原に詰め寄られて、言動が尻すぼみになる。
「まあ、飲めよ。お前って元気とどこで知り合ったの?」
 俄かに機嫌がよくなった井原は豪のグラスに酒を注ぐ。
「俺は、元気の大学の後輩で、GENKIのファンで写真撮らせてもらってて」
「フーン、それ以来の付き合いってわけか。それで今はグローバルに仕事してるってわけかよ、クソ!」
 持ち上げているのかけなしているのかわからない言い回しで井原は自分のグラスにも酒を注ぐ。
「はあ……」
 豪は何と答えていいかわからず、曖昧な返事をした。
「そいつ今日はかなりハチャメチャだから、適当に聞き流しとけ」
 軽く言うと、元気はうまいな、と冷酒を空ける。
「どうしたんだよ、井原さん」
「ま、いろいろあるみたいだぜ」
 ごまかした元気を豪は怪訝な顔で見た。
 店を出ると、酒をがぶ飲みして酔いつぶれた井原を元気がタクシーで送って行った。
 爆睡している井原を担ぎ上げて、井原の部屋に運ぶと、両親は笑いながら済まないと言った。
「いつもはこんなに酔っぱらったりしないんだが」
「まあ、たまにはありますよ」
 ベッドに井原を放り投げると、元気は脱がせた上着をハンガーにかけてクローゼットに引っ掛けた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ