そんなお前が好きだった91

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 その時、上着のポケットから携帯が落ちた。
 元気が携帯を拾った時、画面が見えた。
 画面にはロックもかけていないようだった。
 ついアルバムを見てしまった。
「やっぱな………」
 呟いた元気は少し首を振り、画像を閉じると、携帯をポケットに戻した。
 
  

 ゴールデンウイークが近づく頃になると、新一年生も少しずつ落ち着いてきて高校生の顔になりつつあった。
 音楽を選択している生徒も、最初は緊張気味で真面目に授業を聞いていたはずが、その頃になると後ろの方でふざけ合ったりしている生徒もちらほら出てきて、教師としては注意すべきかどうか迷うところでもある。
 目に余るようなら注意もしようが、他の生徒にとりたてて害がないようならなどと、響がつらつら考えつつ、イタリアの歌曲についての講義を続けていた。
「すみません、後ろの人、静かにしてください」
 響が説明をいったん切ったところで、最前列に座っていた青山という女生徒がきりりとした声で後ろでふざけ合っている男子生徒を注意した。
 一瞬シーンと静まり返ったが、響は何ごともなかったかのように黒板にイタリア歌曲の有名どころを板書しながら続きを説明したが、何とも小気味よい少女である。
 青山留美は音楽部に入った五人の一年生のうちの一人だった。
 はっきり言って美少女だ。
 しかも田舎臭くない、あか抜けた雰囲気というのだろうか、丁寧な言葉遣いでしかしはっきりとした通る声の持ち主である。
 親の仕事関連で中学三年の時に東京から越してきたらしく、ピアノは幼い頃から続けていたというが、新一年生で成績が一番だったという法学部志望の秀才だ。
 青山の父親が大手運輸会社の支店長で、ゆくゆくは本社に戻る幹部候補だという噂は、響の耳にまで届いていた。
 お嬢様で美人で秀才、しかも普段は明るく笑顔が可愛いとくれば、早速男子生徒の注目の的になっている。
 そんな青山にびしっとやられたら、首もすくむというものだ。

 


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