そんなお前が好きだった95

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 くすくす笑いながら瀬戸川は、「顔立ちがごつくないから、キョー先生みたいな感じの人は年を取らないんですよ」と言う。
「でも、先生の高校時代って、線の細い美少年って感じ、あ、今も!」
「何だよ、それ」
「アルバム見ましたよ、井原先生と一緒に文化祭の時の写真、すごく楽しそう」
 響は苦笑する。
「井原先生って昔から涙もろかったんですか?」
 ああ、と響は思い起こす。
「そうだな。何かって言うといっつもぎゃあぎゃあ喚いてた気がする。俺は真逆で、いつも何考えてるかわからない奴って言われてた」
 井原が声をかけてくれなければ、学年も違うし、理系の井原と文系の響ではまるで接点はなかったから、今思えば不思議な縁かも知れない。
 井原がいなければ、響は無味乾燥な高校時代を送っていたに違いない。
「あいつ、犬猫その他動物全般好きでさ、いつだったか拾った仔猫段ボールに入れて、音楽室でしばらく面倒見てた」
そういえばそんなことがあったな。
「ああ、やってそうですね」
 瀬戸川も思わず笑顔で頷いた。
「あいつんち、でかい犬三匹と、猫と、鳥と、魚と、何かいろいろいてさ。仔猫五匹もいたから、面倒見るの難しいとかって、準備室にペットゲージ置いて」
「田村先生、それOKしたんですか?」
「井原だぞ? 人類の横暴のせいで小さな命が危機にさらされているとか自論をまくしたてて、田村先生もうんて言わざるを得なくて」
「その仔猫どうなったんですか?」
「皆からカンパ募って、仔猫病院で診てもらったりして、里親探してみんな無事もらわれてった」
「よかったですね」
「井原んち、とにかくワンコも保護犬ばっか、今はどうなのかわからないが」
 昔、何度か行ったことがある井原の家、家族はとにかく明るさに満ちていた。
 響はあの頃も、明るさとは縁のない自分の家族と比べていた。
 響には結婚とか子供とかは程遠い上、父親とは折り合いが悪いとくれば、いずれまた響はあの家を出ることになるだろう。
 そしてこの街も。


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