雪の街15

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    ACT 3
 
 
 勢いよくドアが開いて、冷たい風がひと吹き店内を巡った。
「うーーーっす! 元気、そろそろステージ作るかぁ」
 頭にバンダナを巻いた、がっしりした体型の髭面が大きな声で元気に声をかけた。
「おう、もちょっとしたらな」
 顔を元気から朔也に向けた途端、髭面の動作が止まる。
「お前、もしや……遠藤?」
「よう、朝倉、久しぶり」
 朔也は笑った。
「遠藤だー! ハハッハ、本物だー! お前、何してんの? こんなとこで、エプロンなんかしちゃって」
 バシバシ朔也の叩きながら、朝倉は笑う。
「臨時バイト。今日のライブの手伝い」
「おい、冗談だろ? 一番の出世頭が」
「何が出世頭だよ。お前またでかくなった? 横に」
「ほっとけ! お前、ガキが二人もいてみろ、貫禄もつくってもんだ」
 一気に二人同窓会と化した朔也と朝倉にちらちら視線を送りながら、紀子は洗い物をしていたが、「絶対どっかで見たことあるんだけどな」と呟く。
 元気は思わず苦笑いする。
「そーだ、年末ライブ、元気、もちろん行くんでしょ? GENKIの」
「顔を出さないわけにはいかないだろうけどな」
 今年はこともあろうに、GENKIは、大晦日に、こんな田舎の市民ホールでライブをやったあと、NHKの紅白にそのままライブで出演するのだという。
 そのため市の職員もおおわらわらしい。
「元気、一緒にやんないの?」
「バカいうんじゃありません」
「そっかー、彼氏が怒るもんねー、モトカレとより戻すんじゃないかって」
「紀ちゃん」
 ジロと睨むと、紀子はわるびれもせず、へへ、と舌を出してみせる。
「でも、一平も豪さんもカッコいいしさー。いいよなー、あんなカッコいい元彼と彼がいてさ、元気ってば。ね、どうせなら、どっちかなんてもったいないから、両方とも彼氏にしちゃえば?」
「はいはい、勝手なこと言ってなさい」
 人前で隠そうなどとは露ほども思わずに元気に告ってくれた、GENKIのボーカル鈴木一平とカメラマンの坂之上豪のお陰で、しかも豪を追ってやってきた元彼女、優花とは意気投合したらしく、すっかり紀子は事情通になり、時々元気を困らせる。
 と、その時、紀子の近くからディズニーの「It’s a Small World」が聞こえてきた。
「あれ、携帯? 鳴ってるよぉ、誰の?」
「ああ、俺」
 朔也はカウンターの中に置いていたコートのポケットから、携帯を取り出した。
「おう、何? え? 今、元気んとこ」
 相手は清隆だ。


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