雪の街17

back next  top  Novels


「名古屋。子供が二人。旦那は名古屋で開業医やってる」
「よく知ってんな。何、お前も実は野村のこと好きだったりして」
 ちょっとほっとした自分に、朔也は我ながら情けなくなる。
「バッカ言え!」
 そう言いながらも朝倉は見事に真っ赤になっている。
「俺のカミさん、藤井康子だよ。野村と仲良かったろ」
「カミさん、藤井か。あの超明るい」
 朔也は賑やかな少女を思い出す。
 クラスメイトの名前があがると、当時はさほど話したことがないのに懐かしくなる。
「ええ、やっちゃんのこと知ってるの? 遠藤さん」
 紀子が聞きつけて口を挟む。
「三年のとき、同じクラスだった」
「えーー、でも遠藤なんて聞いたことないよ。やっちゃんち、斜め向かいだから、仲いいんだけど」
「ああ、俺って、引っ込み思案だったし」
「うそつけ、こんにゃろめ!」
 朔也の台詞に、すかさず朝倉がヘッドロックをかける。
「今度、やっちゃんにきいてみよ。あ、そだ、ねー元気、明日、お店お休みでしょ? スキー行くんだよね? あたしも行く。克典、明日やっぱ仕事だって」
「残念でした、明日は元気は、俺とスキーなの」
 朔也は紀子にしっかと宣言する。
「遠藤さんだったんだ、先週、急に元気にスキー教えろって言ってきたのって。言っときますけど、元気に教えてもらいたいコわんさかいるんだから。一人抜け駆けは許さないわよ」
 紀子は急に大きく出る。
「悪ぃな。明日はウェアとかも一緒に買いに行くことになってんの」
「初心者が元気と滑ろうなんて、百年早いんじゃない?」
「元気をお前の克典とやらの代わりにしようなんざ、図々しいって」
「あんたに、克典のことをとやかく言われたかないわよ」
「たらたら、うぜぇんだよ!」
 一瞬、しーんと静まり返る。
「あれ、今の台詞、どっかで聞いた……」
 紀子が急に考え込む。
 つい、口にした台詞。
 人気ドラマの中で、朔也が口癖になっている言葉をアドリブで使ったものが評判を呼んだのだ。
 普段は冷たくクールな弁護士が、往生際の悪い容疑者を追い詰める時の常套句だ。
「紀ちゃんも遠藤さんもいい加減にしなさい! よし、じゃあ、ステージ作るぞ。紀ちゃん、CLOSEDに変えてきて」
「はあい」
 元気がエスカレートする二人の間に入ってようやくその場をおさめる。


back next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です