雪の街23

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 さすがに腕まくりした涼子が、カウンターの中にグラスを持ってきて洗い始めた時は、元気も「ああ、涼子はいいよ」と声をかけたが、「やだ、今更遠慮とか、ないでしょ、私たちの仲で」と笑う。
「いや、何か、あとが怖いっつうか……」
 実は、みっちゃんや涼子からは再三、曲の提供だけではなくGENKIの活動に少しでも参加しないかとさりげない誘いをかけられている元気は涼子の笑いの奥が計り知れないでいた。
「ちょっとぉ、やっぱ、あんたって、川口朔也じゃないの!」
 その中でやはり強かったのは紀子だ。 
「それがどうしたよ」
「遠藤とか言っちゃって」
「母親が結婚するまでは、遠藤だったんだよ」
「そうなんだ?」
 それにしても、元気はやっぱタダモノじゃない。
 心の中で感心してしまう朔也だった。
 
 
 
 
 紀子もイブが終わり二十五日に突入した頃に帰った後、いつの間にか元に戻されたテーブル席では、高校の同窓会組とGENKI組とが差し入れに持ってきた酒を出してきて勝手に二次会に突入していた。
「川口さん、がこんなところにおられるとはつゆ思いもよらず、失礼しました」
 その人物が朔也とわかると、さすがに豪はしゃっちょこばって挨拶した。
「フン、いいってことよ。お前には元気しか見えてねぇみたいだしな」
 途端、豪は顔を真っ赤にして、また頭を下げる。
「いやいや、こいつ、元気というものがありながら、夏、井上美奈子のことマスコミにすっぱぬかれて、元気に三行半突き付けられる寸前で」
 笑いながら朔也に余計なことを教えたのはみっちゃんだ。
「ちょ……! あんなのデマだって、みっちゃんだって知ってるだろ!」
「お前な、あの、元気を相手に、そんなことをしちゃおしまいよ?」
 同窓会の輪から出張して乱入してきた松田はもう一杯機嫌で声もでかい。
「昔っから、元気のやつには取り巻きが大勢いてよ、別れたと聞きゃ、候補者が後をたたねぇってやつで」
 朔也までが、だろうな、と同調する。
 そうやってじわじわと豪を脅しておたおたさせている松田と朔也は元気の高校の先輩になる。
 さらに松田はサッカー部の主将で、元気は部のアイドル的存在でもあったと、豪は伽藍の常連で元気のクラスメイトだった東からも聞いた。
 客が一人二人と帰っていき、紀子もイブが終わり二十五日に突入した頃には帰った後、いつの間にか元に戻されたテーブル席では、高校の同窓会組とGENKI組とが差し入れに持ってきた酒を出してきて勝手に二次会に突入している。
 その間のテーブルでは、朝から仕込みやらライブの準備やらで疲れて、とっとと帰って寝ようと思っていた元気はげんなりと頬杖をついていた。
 同じテーブルに座った豪と東は、ヨーロッパを歩いた話で盛り上がっている。
 元気の前にはあっちからこっちからワインやらウイスキーやらのグラスが置かれたが、本人は少し口をつけたくらいで、そのうちうつらうつらし始め、やがてテーブルの上に突っ伏して寝てしまった。
 豪がジャケットを持ってきて元気にかけてやった頃、外はホワイトクリスマスというより大雪になりそうな気配を見せていた

「GENKIに川口朔也だぁ? どうなってんだ? 何でこんなかた田舎の茶店に、業界人間の人口密度がこんなに高いんだ~」
 一杯加減の東がぶつぶつと呟いていたのは言うまでもない。
 

おわり


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