「一晩寝れば治るさ……」
「ほんまか……?」
疑いの眼差しを向ける千雪に、京助は笑みを浮かべた。
「ああ……だが……」
ひょいと京助の腕が伸びて千雪の腕を掴む。
「寒いからお前、ここに来い」
京助は掛け布団を捲り上げて言った。
「いやや! 風邪が移る」
「俺を見殺しにする気か?」
「殺しても死なへんくせに」
「つれねぇな……」
少しばかり寂しげな京助の言葉に気を許した千雪を、京助は中に引っ張り込んだ。
「こら…京助!」
「……あったかい……」
千雪を抱きしめたまま、京助が呟く。
もう、そういうつき合いはやめるて、言うたはずやで!
家に泊めるつもりもなかったんやし!
心の中で喚いてみたものの、それを言葉にすることは今はできなかった。
ぬくもりに千雪の心も癒される思いがした。
明日の朝までや。
ちょっとだけや………
襖が閉まる音で、千雪は目を覚ました。
京助の横で猫のように丸くなって、すっかり熟睡してしまったらしい。
「京助、どないした?」
入ってきた影に気づき、千雪はがばっと身体を起こした。
「便所。熱は下がったみたいだが、汗だく。シャワー、浴びるか」
京助は布団の上に胡坐をかいて言った。
「アホか! いい気になってるとまた熱ぶり返すで。着替え持ってくるし」
「汗、拭きたいからタオル貸して」
「わかった。熱い湯で絞ってくるわ」