花のふる日は 91

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「一晩寝れば治るさ……」
「ほんまか……?」
 疑いの眼差しを向ける千雪に、京助は笑みを浮かべた。
「ああ……だが……」
 ひょいと京助の腕が伸びて千雪の腕を掴む。
「寒いからお前、ここに来い」
 京助は掛け布団を捲り上げて言った。
「いやや! 風邪が移る」
「俺を見殺しにする気か?」
「殺しても死なへんくせに」
「つれねぇな……」
 少しばかり寂しげな京助の言葉に気を許した千雪を、京助は中に引っ張り込んだ。
「こら…京助!」
「……あったかい……」
 千雪を抱きしめたまま、京助が呟く。
 もう、そういうつき合いはやめるて、言うたはずやで!
 家に泊めるつもりもなかったんやし!
 心の中で喚いてみたものの、それを言葉にすることは今はできなかった。
 ぬくもりに千雪の心も癒される思いがした。
 明日の朝までや。
 ちょっとだけや………
 
 
 
 
 襖が閉まる音で、千雪は目を覚ました。
 京助の横で猫のように丸くなって、すっかり熟睡してしまったらしい。
「京助、どないした?」
 入ってきた影に気づき、千雪はがばっと身体を起こした。
「便所。熱は下がったみたいだが、汗だく。シャワー、浴びるか」
 京助は布団の上に胡坐をかいて言った。
「アホか! いい気になってるとまた熱ぶり返すで。着替え持ってくるし」
「汗、拭きたいからタオル貸して」
「わかった。熱い湯で絞ってくるわ」


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