氷花 15

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「昔の話だ! 着替え持ってくるから待ってろ」
 つい調子にのってぽろっと口にしてしまいそうになった京助は、「あのヤロー、誘導尋問しやがって」とむっとしたまま部屋を出る。
「京助さん、ダイニングにお食事の用意できました。お風呂はわかしてありますが、お食事のあとになさいますか?」
「ああ、先、食べる」
 階段を上がってきた藤原に、京助はそう答えて向かいの部屋に入っていくと、チェストからセーターや下着をいくつか取り出し、それを抱えて千雪の部屋に戻る。
「ほら、着替え。足りなければあるから言えよ」
「もっと早うゆうてくれとったら、俺、用意したのに」
「時間がなかったんだから、仕方ねぇ。それより何か食うぞ、下行って」
 一階は玄関ホールに続いて三十畳ほどのリビングがあり、その右手奥にダイニング、キッチンとなっている。
 左手奥には廊下が続いているようだ。
 テーブルにはカニを使ったペペロンチーノソースのパスタ、アンチョビ、生ハム、スモークサーモンなどのカナッペ、何種類ものチーズ、トマトやアスパラを使ったサラダ、そして氷の入ったワインクーラーにはワインが数本用意されていた。
「わあ、美味そうやな。おそうにお手間かけてしもてすみません、藤原さん」
 あくまでも礼儀正しくテーブルの横に控えている藤原に、千雪は声をかけた。
「お気になさらず、どうぞ。近くのレストランに頼んで作ってもらったものです。お口にあえばよろしいのですが」
 八人は座れるだろう大テーブルの右端に向かい合って二人が座ると、藤原はワインを取ってソムリエナイフでコルクを抜いた。

 


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