氷花 16

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「あれ、公一さんは?」
 千雪が聞くと、「いえ、お客様とご一緒というわけには」と藤原は一瞬躊躇する。
「かまわないぜ、こいつなら。どうせ腹減ってんだろ? 運転しっぱなしだったし。呼んでこいよ」
「はあ……しかし」
 まだ戸惑い気味の藤原をよそに、「やったー、いいの? 京助さん」と公一は聞いていたらしくキッチンから顔を出した。
「おう、座れよ」
「じゃ、遠慮なく」
 たったか入ってきた公一は、勝手に千雪の横に座る。
「藤原、今日はもういいぜ、休めよ。あとは勝手にやるから」
 京助が言うと、公一も「オヤジ、片付けとか俺やっとくから」と言う。
「それでは、失礼いたします」
 あくまでも礼儀正しく一礼すると、藤原はダイニングを辞した。
「ふうーー、オヤジがいると肩凝るよな」
 三人になってワインで乾杯すると、公一がボソッともらす。
「藤原さんって、ほんま礼儀正しいな。執事の学校とか出てはるん?」
 千雪の率直な意見に公一が笑う。
「確か、若い頃、ケンブリッジ留学していたって。イギリスには養成学校みたいなのがあるらしいけど、そんなの多分行ってないっすよ」
「留学中、どっかの貴族のうちで修行してたらしいぞ。だからありゃ、筋金入りだ。俺が仰々しいのは嫌いだってうるさく言うんで、最近俺らだけのときは藤原にしてはあれでざっくばらんな対応なんだ。親父らの客相手のときは、聞いててマジにこっちが肩凝るくらいだ」
 京助が答える。
「そうなん?」
 あれでも十二分に仰々しい気がする。

 


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