氷花 17

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「ひえぇ、修行? 俺、オヤジにゆくゆくは俺があと継いでバトラーやれって言われてるんすよ。俺、いやだなー、そんなの。マジ、きつそう」
「お前には無理だな。適正ないぞ。あきらめろ」
 やる前からネをあげている公一に、京助が言った。
「って言ったってなぁ、一応、ほら、育ててもらった恩ってのもあるしさ」
 ワインをごくごく飲み干してから公一は皿に取ったパスタをつつく。
「ばーか、自分にあった仕事するのが、一番いいに決まってるだろ」
 京助は断言する。
「でも、やっぱな。ほんとの親ならそうも言えるけど」
「え、ほんとの親ならって?」
 ぶつぶつ口にする公一の言葉に、千雪が口を挟む。
「ああ、俺、三歳くらいの時にオヤジに引き取られたんですよ、施設から。ってもほとんどその頃の記憶はないんっすけどね。ほんとのことはっきりわかったのは中学入ってからで、それまで俺、何も考えずに京助さんたちと一緒に番町の屋敷で遊びまわってたし。俺、だからあの屋敷がうちだって思い込んでたくらいで」
 へへへ、と公一は笑う。
「お前んちだろうが。他にないだろ」
 京助は怒ったように言う。
「いやあ、そうなんっすけどね、ほら、あんなでっかいうちで、金持ちだったりすると、ほんとならオヤジは使用人だし、その子供と主人の子供が分け隔てなく、なんてあり得ないっしょ? 普通。それがあのうちって、たくさん人がいるせいか、せつばあさんも会長も別になーんも言わねーし、おやつも遊びも叱られるのもみんなひっくるめて一緒で、ガキン頃はほんと楽しかったなー」
 しゃべっている間も、公一はぱくぱくと口を動かしている。

 


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