氷花 2

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それならと、最近ではこれを着ていったらどんな反応が見られるかとか、ダサさにもいろいろバリエーションを考えて面白がっている自分がいる。
だがまさか自分の小説がミステリーの賞を取ってベストセラーになったり、あまつさえそのダサダサの風貌が勝手に性格づけされて一人歩きし、一気にマスコミによって全国的に知られるようになるとは夢にも思わなかった。
上も下も数年以内に母校からのT大生が現れなかったのは幸いだったのか、京都にいる同級生の菊子や江美子に聞いた話によると、卒業して以来顔を合わせていないクラスメイトの間では、千雪は急激に変貌したという噂になっているらしい。
千雪のその話題の風貌を信じ込み、その風貌ごと気に入っているという佐久間は、口を開かなければなかなかイケメンの部類なのだろうが、同時にまた十二分に変人の部類なのかもしれない。
「でかい声出すなや」
千雪は思い切り睨みつけながら佐久間の向かいに座る。
「そうかて、先輩わからんかしれんと思て。なんや先輩、また小食やな。せめて天ぷらうどんにしやはったら?」
「俺が何食おうとお前に関係あれへんわ」
「あかんがな、ただでさえ細いのに、ほな、出血大サービスや」
ほい、と佐久間は自分が食べていた天丼のえび天をひとつ千雪のうどんの上に載せた。
「何すんね! 今日はあっさりしたもん……」
「遠慮はいりまへんよって、ビシバシ食べて食べて」
「人の言うこと聞け!」
「はあ?」
ニカニカ笑い、千雪の怒りもどこ吹く風の佐久間は味噌汁をすすり、大盛天丼をがつがつと平らげていく。
「せえけど、さすが、京助先輩いーひんと周り静かやなー」
あっと言う間に食べ終え、プラスチックの茶碗の茶を一気に飲み干した佐久間は、ようやく人心地ついたようにのんびり周りを見回した。
「実習で手術に立ち会うやなんて、俺は頼まれてもごめんやけど」
うっと、うどんの最後のひとすすりを千雪は危うく飲み込んだ。


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