氷花 20

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 千雪の部屋は客間らしくバスルームもついていたが、一階に広い風呂を藤原が用意したと京助に言われ、せっかくなのでそちらに入ることにした。
「俺も一緒に入ってやろか?」
 千雪が温泉でも風呂でも他人と入ることに抵抗があることを知っていて、京助はちょっと絡む。
「遠慮しとく」
 千雪はバスケットシューズをスリッパに換えて立ち上がった。
「今更の仲だろ? そんなんじゃ、お前、いつまでたってもトラウマ克服できねーぜ」
「結構やし。ついてこんとき」
 十人は一度に入れそうなくらい大きな風呂は檜造りだ。
 木の匂いが心地よい。
「贅沢やなぁ」
 ポツリと口にして、千雪は湯の中で思い切り手足を伸ばす。
 原稿の締め切りも終わっているし、かなり強引にニセコまで連れてこられたものの、思いがけない雪を見せられ、美味い食事のあと広い湯船につかっているなんて目まぐるしい展開は、千雪にとっても心が浮き上がりそうな状況だ。
 風呂から上がり、用意してあったバスローブをはおると、千雪は脱いだ服を持って部屋に向かった。
 風呂を出るとリビングとは逆の位置に二階へ続く螺旋階段があり、吹き抜けになっている。
 ドアを開けようとノブを握った途端、後ろから手が伸びて振り向きざまに唇をふさがれる。
「………こら……京助、やめ……」
 幾度もキスを浴びせかける京助の裸の胸に腕を突っ張り、途切れ途切れに息をついて千雪は抵抗する。
「………アホウ! こんなとこで……」
 夜も更けて誰もいないほの暗い廊下とはいえ、この屋敷には他にも人がいるのだ。

 


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