氷花 24

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     ACT 3
 
 
 美しい山々の連なり。
 雪をかぶった街並み。
 寒ささえ透明なたたずまい。
 そんな自然の中に浸るだけでも十二分に千雪は感動的だったのだが。
「後ろに体重かけ過ぎだ!」
 青空の下のパウダースノーはいいとしても。
「もっと力抜け!」
 リフトに乗って眺めるのは絶景で。
「脚伸ばしながら開く!」
 黒とオレンジのウエアの長身の男は、ここでも確かにサマになっているのだが。
「バランスだ、バランス!」
「大声で怒鳴り散らすな!」
 ちょっとくらい千雪が言い返したところで、このジャイアンは聞く耳など持ち合わせていない。
「ストックは杖じゃねぇ!」
 しかもすぐ傍を傍若無人なボーダーがぶつかるスレスレで掠めて滑り降りていくし。
「てめぇ、バイク乗ってんだろうが! バランス考えろ!」
 朝からスキー場に連れてこられた千雪は、初心者だという訴えも聞き届けられず、リフトで中級コースにぽんと放り出され、プルークヴォーゲンだ、シュテムターンだと滑らされては、滑り終えたところをスキーで登らされ、また滑り降りる、という具合で、ジャイアン京助に扱かれ続けているのである。
「もう腹減った! メシにする」
 千雪は宣言した。
「まだ十一時半だぞ、フン、仕方ねぇ、あと一回上がったら、カフェテリアまで降りるか」
「げぇ………」

 


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