氷花 25

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 いい加減疲れきっている千雪は嫌そうな顔を隠そうともせず、京助に思い切り剣のある目つきを向けるが、ジャイアン京助は意に介さず、それ行け、やれ行けとストックで千雪の尻をぽんぽんと叩く。
 こういう時、人は殺意を覚えるのじゃないだろうか、などと憤怒に煽られた千雪の心の内とは裏腹に、青空は無性に輝いていた。
「……クソ…ぉ!」
 朝、ダイニングに下りていくと、優しそうな女性が朝食を用意してくれていた。
「おはようございます。あら、京助さん、ついに彼女できたの? すんごくきれいな方ね~」
 にこにことスクランブルエッグやフレンチトーストなどをテーブルに並べながら、その人は京助の後ろの千雪を見て言った。
「おはようございます。俺、小林、いいます。京助の後輩です」
 温かな雰囲気の女性に、怒るわけにもいかず、千雪ははっきりと挨拶した。
「あら、ウソ、男の方だったの? やだ、ごめんなさい、てっきり京助さんの彼女かなと」
 女性は千雪を穴のあくほど見つめて、顔を赤らめた。
「おはようございます、咲子さん、そう、こいつ、俺の後輩。しばらくいるからよろしく」
 サーバからカップにコーヒーを注ごうとしている咲子から、京助はサーバを取って自分でカップに注ぐ。
「咲子さん、予定日いつだっけ? メシ作ってくれるのはありがたいが、無理するなよ。このくらい俺、自分でやるから」
 千雪も咲子のエプロンの辺りのふくらみに気づいていた。
「もうちょっと先なんだ。あとは出てくるの待つだけだし、昨日から、亭主、札幌出張で退屈だったから、いいのよ」
 アハハと笑う咲子は、屈託なくて好感がもてる人で、長年この山荘の家事をやってくれている人だと、あとからやってきた公一が千雪に話してくれた。

 


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