氷花 32

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「そうか。あとは医者に任せるしかない。ああ見えて咲子さん、強い人だから、大丈夫だよ、きっと。赤ちゃんも。京助、ついてるんだろ? 俺らは腹ごしらえをしよう。藤原もいただけば? 美味そうだよ、彼、小林くんが作ってくれたカレー」
 今度は紫紀の表情が柔らかくなる。
「いえ、私はまた後ほどで結構です。お二人ともこちらでお召し上がりに?」
 藤原がそういううちにも、紫紀は椅子に座り、カレーを食べ始めた。
「では、私室におりますので、ご用がありましたら、お呼び下さい」
「了解。……お、美味い」
 藤原が下がると、紫紀は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
「君も食べたら? スキー帰りなら腹が減っただろう?」
 紫紀が食べているのを見ていたら、千雪も空腹なのを思い出した。
「ほな、いただきます」
 すると紫紀は立ち上がって、もうひとつの皿にご飯を盛りつけ、二つのグラスにミネラルウォーターを注ぐ。
 紫紀の向かいに座ってカレーを食べ始めたものの、やっぱり紫紀の視線が気になって、顔を上げた。
「美味かった。おかわりしてもいいかな」
「…どうぞ」
 一皿をペロリと平らげた紫紀は、しっかり一人前カレーを盛りつけてまた向かいに座った。
「京助の、後輩だっけ? 小林くん。あ、そうそう、俺、京助の兄の綾小路紫紀と言います。バツイチで現在は独身、息子が一人、以後、お見知りおきを」
 にっこり笑って、また紫紀は千雪を見つめた。
「以前、どこかで、お会いしたことは?」
「お目にかかったのは初めてですけど」
「あっそう」
 紫紀は小首を傾げる。

 


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