氷花 5

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「何でです? 先輩かてええ年の男やし、アッチの方かて、一人では寂しいもんですやんか」
 ちょっと声を落として、佐久間はにやりと笑う。
「ここいらで彼女でもこさえて、あの、歩くだけで女が落ちるいう、京助先輩を見返してやりましょうよ」
 歩くだけで女が落ちる、そんなあきれはてた噂を千雪も耳にしたことはある。
「何であんなやつがそないええんや」
 思わず知らず口から悪態がこぼれる。
「そら、頭よし、ルックスよし、家柄よし、加えてあの豪胆さがたまらんのんと違いますか? 女からすれば、あわよくばセレブ婚、でなくても彼女、でなくてもセフレ、ってな具合で、並みのスターごときじゃ太刀打ちできない男ですやん。まあ、今までに京助先輩がつきおうた女も、そんじょそこいらの女と違いますしな、スーパーモデルの何たらとか、何とか財閥のお嬢とか、五所乃尾流家元の娘とか」
 佐久間は調子にのって、千雪にとってあまり愉快なものではない言葉を並べ立てる。
「まあ、うまいことやったはるんやろうけど、次から次へと女は吸い寄せられるんや」
「うまいこと……」
 胸の奥の方で苦いものがざわめき始める。
「そらあれだけの男や、一人に絞れ、いう方が無理いうもんやな~」
 一人に絞れという方が無理、か。
 千雪は心の中で呟く。
『お前は全部俺のもんだ。誰にだって渡さねえ…』
 そんな言葉を京助がくれたのはついこの間のことだ。
 勝手なこと言いよって!
『遊びは裏切りじゃねぇからな』
 でも笑いながらそんなことも言っていた。
 ちょっと冷静になって考えてみると、そうだよな、と思う。

 


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