氷花 7

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 つい先日、三作目の小説を書き終えてほっとしたところで、なんとなくこれからのことについてゆっくり考えたいと思った千雪は、自分の居る場所をもう一度再確認するために、随分久しぶりになるが、正月には実家に帰ってみようかと考えていた。
 ここのところ何かというと熱に浮かされたように京助のことばかり考えてしまう、ちょうどそんな頭を冷やすのにいい頃合かもしれない。
 ひとり立ちを目標に東京に出てきたはいいが、電車の乗り降り、近所づきあい、ゴミの出し方、どれをとっても最初は何をどうしたらいいのかわからず途方にくれていた。
 家に来いという伯父伯母、従姉の小夜子の誘いを断って一人で悪戦苦闘はしたものの、いつの間にか世話をやかせていたのは京助だった。
 心まで寄りかかってしまっては、自分がだめになりそうだ。
 一人で歩いていかなければならないのだ。
 自分だけに差し伸べられる手はとっくにないのだし。
 いつまでも自分の思い通りになるはずがない。
 割り切った、というのが、大人のつきあいの大前提なのかもしれない。
 ふうと一つ深呼吸をする。
 研究室のある八号棟に向いながら空を見上げると、鈍い冬の色をして彼方へと広がっている。
 幸せにやってんのかな、研二。
 最近、実家の菓子屋を継いだという幼馴染みの遠い眼差しに、しばし思いを馳せた。

 


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