氷花 8

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     ACT 2
 
 
 佐久間に心配された千雪のイブもクリスマスも、長編とは別に頼まれていた雑誌の短編の締め切りに追われていつの間にか過ぎていた二十六日の朝。
 二十五日の締め切りに数時間遅れて書き上げたばかりの原稿をメールで送り、ボロボロの状態でベッドで丸くなっていた千雪を叩き起こしたのが佐久間からのコールだ。
 電源を切っておかなかったのを後悔しながら、ジャカジャカ鳴り出した携帯にぼんやりな頭で千雪が出ると、テンションの高い佐久間の声が響く。
『あ、先輩、今度、彼女とその友達とスキー行くんですけど、よかったら先輩も………』
 佐久間は例の合コンで彼女をゲットし、楽しいクリスマスイブを過ごしたらしい。
 相手は年上の美人OLだという。
「……………ほか、あたれや……」
 あからさまに不機嫌な声を絞り出して今度こそ電源を切る。
 もともと携帯は千雪が望んで持っているわけではない。
 京助が強制的に押しつけたものだ。
 常に追われているような気がして携帯など持ちたくなかったのだが、都合に合わせて使っている。
 従妹の小夜子に番号を教えたくらいで、佐久間は目ざとく千雪の携帯を見つけて勝手に登録してしまっただけだ。
 もちろん編集担当には教えていない。
 担当者は今や小林千雪という定着したイメージを信じ込んでいるせいか、ほとんど家電かメールのやり取りくらいで、あまり会いたくないらしいのは千雪にとって好都合だった。
 ただし、原稿を送ったあと、電話をくれた編集担当者に、正月には久しぶりに実家に帰ることを告げると、それはきっと今の作品もいいものになりますね、としっかり釘を刺された。
 そこいらへんはまあ甘くないというところか。
 イブといえば京助もお誘いはわんさかあったらしいが、どうやら実習でつぶれたようだった。

 


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