お正月10

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「美味いわ、このぶり大根」
「鈴子さんに教わったのさ。キッチンに使ってない圧力鍋あっただろ」
「ああ、ひょっとしてあれか? 早う料理できるて、父が買うてきたはええけど、お母ちゃん指火傷しよって、以来、危ないから使うなて、仕舞い込んだやつ」
 京助は笑った。
「とんでもないお嬢だったみたいだな、うちの母とどっこいか?」
「やから、かなりドジっぽかっただけや。作るのはトロかったけど、それなりに美味かったで? まあ、レパートリーはそうなかったけどな」
「芸術家だから、それくらいでいいさ。そういや、この正月のうちに、絵の方確認しておけよ」
 そういえば、いつの間にか三田村と京助が結託して原夏緒の作品展を勝手に計画していたのだ。
 夏には京助の兄の紫紀に、作品展会場となる九条美術館の館長、九条祐紀を紹介されたが、千雪が夏緒に生き写しだと、祐紀の歓迎ぶりは相当なもので、本当のところ千雪は閉口した。
「おい、あいつに気をつけろよ、危ねぇぜ」
 早速京助が耳打ちするのに、千雪は肘鉄をくらわせた。
 九条美術館では、ちょうど秋頃予定していた海外の作品展があったのだが、貸出してくれるはずの美術館の要望と噛み合わず、進展していなかった。
 そこへ紫紀を通じて原夏緒の作品展の話を聞いた祐紀は、即座に進展していない美術館との交渉を打ち切り、俄然、館長自ら企画に積極的に参加しているという。
 ともあれ三田村がプロデュースを買って出てスポンサーを集めてくれたらしいが、東洋グループがメインスポンサーとなれば、美術館としても大々的に宣伝ができると祐紀は喜んでいた。
「せえけど、あんまり大々的いうのんはな」
 そもそも原夏緒はそんな大それたことを望む人ではないだろう。
 作品の持つ芸術性云々を語る前に。

 


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