Novel ◆ 京助x千雪Top ◆ back ◆ next
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????????????????????????????? Act 1
かねてから出演を依頼されていたドキュメンタリー番組の撮影に入るから昼過ぎには来てくれと、工藤から連絡を受けたた小林千雪は、午前の講義が終わると研究室には寄らず、カフェテリアでサンドイッチとコーヒーでランチを済ませたその足で指定された美術館に出向いた。
行ってみると、パリにいるはずのスタイリスト愛川浩美が待っていて、千雪を驚かした。
工藤の仕事ではしょっちゅう呼びつけられるらしいのだが。
「先週かな、工藤さんから。三ヵ月ぶりの日本だし、千雪さんの仕事だって言うんで飛んできちゃった」
大喜びの浩美である。
妙な事件で知り合ったのだが、以来浩美はすっかり千雪フリークだ。
番組のメインキャスターである檜山匠は、以前は東都美術館で学芸員として勤務する傍ら雑誌に寄稿した雑文が評判を呼び、テレビにも進出、若手イケメン美術評論家として昨今話題の男である。
T大でも講義を持っているので、千雪とも互いを知ることとなったのだが、能の狩野流宗家嫡子として生まれながら、家元の座を腹違いの兄に譲り、逆破門した能楽師というプロフィールも騒がれる理由に一役買っている。
「ご一緒でよろしいんですか?」
浩美が聞いた。
「あ、全然気にしない。ね、千雪さん」
邪気もなくにっこり笑う匠に千雪は、
「まあ……」
と、面白くもなさそうな顔で言葉を濁した。