Novel ◆ 京助x千雪Top ◆ back ◆ next
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その騒ぎに我に返ったように工藤が笑う。
「工藤さんまで冗談言わんでください」
「そういや、また来週のゲーノーニュースに久々大センセーも登場するしな」
ふいに千雪は口をつぐむ。
「何よ、それ?」
アスカがすぐ反応する。
いつの間に手に入れたのか、工藤が投げてよこしたゲラには、財界のパーティのあとという説明付きで、今にも車に乗り込もうとする美女と、ドアを開けてやる京助の写真。
『財界のプリンス綾小路京助の新しいお相手は』というコピーがデカデカと載っている。
その新しい相手という美女は、先頃TVなどで騒がれているお嬢様タレント、美咲里乃。
梨園の大物、中村清右衛門の娘で、アメリカ帰りという、何の不自由もなく育ったアクのない美女だ。
ちょうど今売れっ子の流とはドラマで共演もしている。
京助とは家柄も釣り合うとか、業界関係者のお墨つきまである。
その写真に写っている夜、京助の帰りが遅かったのを千雪も知っている。
「里乃のやつ、いつのまに! ドラマの時なんか、微塵もそんなそぶりなかったのによ」
流がブツくさ言う。
「何だ、振られたんだ、流」
とはアスカ。
「言ってろ! 誰があんな生意気な女!」
「あら、里乃って生意気なの?」
「お前には負けるがな」
その時、千雪の携帯が鳴った。
千雪は隅の方に移動してそれを受けた。
実は事件のようすをしりたくて警視庁の渋谷の電話を待っているのだ。
「あ、ああ、誠。 え? 今、青山プロのパーティやて。うん。え、ここにか? かまへんやろ」
いつのまにか傍にきていたアスカが千雪の顔を覗き込む。
「京助?」
「誠や」
「わ、久しぶり」
嬉しそうにアスカが笑う。
「ええいうたんやけど、新しい車調達してくれるて」
「え、今度は何?」
「ポンティアクいうとったけど」
「なるほど、手回しいいじゃん。前の車からアシがつくかも知れねーしな」
コロナビールを飲みながら流がすかさず絡んでくる。