花びらの囁き 16

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 財布を忘れそうになり、ギリギリ成田エクスプレスに間に合ったが、まるで何もかもとにかく空港にくることさえ初めての悠は、高津に急かされながら搭乗手続きをすませ、気がついたらもう二人を乗せた機は日本の上空から遠く離れていた。
 もうこれで俺の人生終わりか、とさえ思われたいきなりの離陸だったが、雲の上に落ち着いてみると、ほんとに飛んでいるのか、というくらい穏やかだ。
「乱気流に巻き込まれると面白ぇんだ、これが」
 隣でうきうきと飛行機を楽しんでいる高津に悠はちょっとげんなりだ。
 高津はハワイやグァムは女の子といったことがあるから、国外は初めてではないが、さすがにヨーロッパはいろいろと下調べをしてきたらしい。
 そういうところが高津らしく、何でも行き当たりばったりの悠は最初から高津におんぶに抱っこの状態だ。
 それをもし河崎にでも見られたら、何を言われるかわからない。
 ちぇ、これからは俺だってひとりで何でもやってやらあ!
 荷物は大きめなリュックひとつと、いつも使っているショルダーバッグひとつだ。
 大きなスーツケースを持参した高津は、面白いものがあったら買ってくるというつもりらしい。
 落ち着くと、ふっと夕べからの藤堂に対する自分の態度が気にかかる。
 考えてもみなかったが、もし万が一、飛行機が落っこちたとしたら、夕べ藤堂の顔を見たのが最後ということになる。
 朝起きると、テーブルの上にサンドイッチが置いてあった。
 藤堂のメモと一緒に。

 


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