花びらの囁き 25

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 翌日二人は朝早く、バチカン美術館に入館する行列に並んだ。
 これでもかなり早く来たつもりだったが、世界中から集まってくる観光客の考えることは同じなようだ。
 しかも、その行列を占める割合が多いのは、日本人観光客の団体さんに違いない。
「一応、その一番端の柱んとこで待ち合わせってことにしよう。何かあったら、携帯かけるかラインしろ」
「わかった」
 意気揚々と、二人はシスティナ礼拝堂へと向かう。
『最後の審判』は二人とも見たくてしょうがなかったシロモノだから、人ごみにもまれながら、天井を仰ぎ見る。
「すげえ」
 そんな感想しか出てこないが、本物の迫力に圧倒される。
 そして、あれはなんだろう、これは、と絵を追ってきた悠は、人の波に押されていつの間にか高津とはぐれていた。
「まあ、いいか」
 ラファエロの『アテネの学堂』が面白いのは、中央の二人の人物がレオナルドとミケランジェロといわれていることだ。
 ちゃっかり自画像なんかも入れているラファエロは結構ナルシストだ。
 その甘い画風はさほど好きではないし、ミケランジェロほどの迫力は感じられないが、ラファエロの絵は説得力のあるものばかりだ。
 ピエタやサンピエトロ寺院の内部をゆっくりと見ながら歩いたあと、絵画館でレオナルドのヒエロニムスやカラヴァッジョを、時間の流れるのも忘れ、悠は飽きることなく見つめていた。

 


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