花びらの囁き 27

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「………藤堂に電話してみても、拉致あかないよな……」
 パリに行く機内の中で、ちゃんと藤堂の携帯のナンバーは登録されているのは確かめていた。
 ラインしたり電話することなんかないさ、と高をくくっていたのに。
「でも、もし高津に何かあったんだとしたら……」
 いざとなったらどこどこに連絡する、ということを書いた注意書きは持っていた。
 でも残念ながらホテルだ。
 悠はすがる思いで、藤堂を呼び出した。
『悠ちゃん?! どうした?』
「どうしよう………藤堂……」
 あっさりと電話はつながり、心配そうな声の藤堂に、悠は高津と会えないのだと伝えた。
『今、どこにいるって?』
「サンピエトロ寺院の向かって右側の一番端の柱のとこで、高津と待ち合わせしたんだ……でも、高津の携帯、つながらないんだ」
『右側の一番端の柱だね? いいか、そこを動くんじゃないぞ』
 藤堂に場所なんか言ったって始まらないのに。
 悠は思いながらも必死で告げていた。
 電話が切れると、またぞろ夜のひんやりした空気がまとわりついて、不安を助長する。
「悠ちゃん!」
 聞き慣れた声に気のせいかと悠は思った。
「悠………よかった、無事で」
 目の前にいる藤堂に、悠はそこが東京だったっけ、と錯覚しそうになる。


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