花びらの囁き 34

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 それは、ひょっとすると初めて彼の絵を見た時に既に漠然とわかっていたのかもしれない。
 生い立ちも行動も言動も何もかも度外視した悠という一つの存在を、どうにかして受け止めたいと、藤堂も思っていたのかもしれない。
 藤堂は悠の傍で何も語らず、じっと彼を見ていた。
 高津とティッツィアーナは他の部屋に行ってしまったようだ。
 ようやく悠の指が動く。
「悠………」
「花びらが……………」
「花びら……?」
 こっくりとうなずく悠は言った。
「花びらが囁くんだ………」
 藤堂は再び絵に視線を戻す。
 それからしばらく悠の肩を抱きしめたまま、じっと絵を見ていたが、おもむろに悠を促すと、ゆっくりと美術館を出た。
 

 


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