花びらの囁き 35

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 ミケランジェロ広場の向かい側の高台に、河崎が買った屋敷があった。
 それは以前イタリアに留学していた浩輔がまたいつでもフィレンツェにこられるようにと買ったものだ。
 要は、どこか知らないところにまた行ってしまわないようにということだろうが、浩輔は今河崎のお守り役に徹していて、そんなことは露ほども考えないだろう。
 仕事で来る機会はあるが、いつもはサービスの行き届いたホテルでの滞在で、イタリアの古い時間に浸るようなことはあったためしがない。
 だが、この古い石の屋敷は古代の匂いがして、時間の流れを止めたがっている。
「いいんだよ、無理に止めなくても」
 藤堂の腕の中で悠はまた涙をこぼし、しゃくりあげる。
「う……るさい……なんだよ、………藤堂、人を子ども扱いして」
「子どもにはこんなことできないよ」
「…う……ああ………っ………」
 突き上げる藤堂の与える刺激に耐え切れず、悠は甘く声を上げる。
 藤堂に抱えられたまま美術館から屋敷に来てからもしばらく涙が止まらなかった。
 服を脱がされて優しく愛撫されると、まるで全身がどこもかしこも過敏に震えてしまう。
「藤堂…………」
 悠はひたすら与えられる快感を享受するし、欲しがった。
 長い指先にくすぐられると、体温はやけどしそうに上がり、熱いばかりのため息をこぼす。
「悠……めちゃくちゃ可愛い……」
 どこかで犬の鳴き声が聞こえた。
 ざわめく風が屋敷の周りの木立を揺らしても、二人が離れる気配はなかった。
 

 


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