花びらの囁き 36

back  top  Novels


 パリ発のアエロフロートでスケジュール通り、高津と悠は日本に向かった。
 たった十日間の旅だったが、二人にとって忘れられないものをくれた時間となった。
「ティッツィアーナちゃーん!」
 ティッツィアーナとしっかりメアドや携帯番号を交換したりして、うきうき気分なのは高津だ。
 待ち受けで微笑む彼女の写真にキスなんかして、浮かれている。
 ブスっ面は隣の悠だ。
「なーに、怒ってんだよ。また、喧嘩したのか? だんなと」
「だんなとか言うな!」
「なーにゆっちゃって、嬉しいくせに、だんなと一緒に帰れてさ」
 そう、藤堂に乗せられて屋敷で一夜を過ごした翌朝、悠はめちゃ後悔した。
「何で俺ってこうもふがいないんだろ」
 藤堂の腕の中で泣きまくったり。
 ぜんぜん対等なんかになれっこない、これじゃ。
 ウフィツィを堪能し、ドゥオーモに登り、ついでにまたアウトストラーダを突っ走って、ミラノに連れてってくれた藤堂のお陰で、今回はあきらめていた、サンタ・マリア・デレ・グラッツィエ教会の『最後の晩餐』も見ることができた。
 それは嬉しい。
 嬉しいのは山々だが、やはり悔しいのだ。
 自分だけではそれができなかったことが。
「そんなことはない。俺が手っ取り早くおせっかいだけだろ?」
 なんて藤堂は言うのだが。

 


back  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ