花びらの囁き 6

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 目を輝かせて語る悠がひどく可愛くて、藤堂は思わずその髪をわしゃわしゃとかき回したくなる。
「ゴッホは一応見ときたいし、高津のやつがカミーユ・クローデル命だからさ、ロダン美術館もチラッと行かなきゃだし」
「カミーユ・クローデル! うん、なめるように細部まで神経が通った作品って感じかな。いいね、しかも美人だ」
「まな、ロダンのヒヒジジイの作ったお約束なシロモノより数段マシ、かな」
「悠にかかっちゃ、ロダンもかたなしだな」
 藤堂はくっくっと笑う。
「俺にとっちゃ無用のもんってことだ。ロダンを崇拝するヤツに喧嘩売る気はないさ」
「なるほど。しかし過密スケジュールだな」
「ほんとはさ、もっとゆっくりいろんな絵、見たいんだけどさ、ゴッホやノルデやムンクやヴァンドンゲン、それからクラムスコイとかペトロフ・ヴォドキンとかルブリョフとか? 見てみたいよな」
「ヴォドキン? また意外なとこを攻めてるな。フィロソフなんかはどう?」
「あ、そう! あんたもよくわかってんじゃん!」
 意気揚々と語る悠には何の迷いもない。
 二人で絵について語り続けた夜は更け、やがて悠は藤堂が飲ませたワイン二杯で、あっけなく眠ってしまった。
 つい先日都の美術館で始まった卒業制作展の準備とバイトのかけもちで疲れているのだろう。
 若さだけをバネに動いているが、限界を超えてやってしまうから、いつぞやのように倒れるような羽目になる。
 大人だなどと言い張るが、やってることはまるで子どもだ。
 高津や悦子も言っていた。
『クラスのアイドル、っていうよりまるきり怖いものなしのやんちゃ坊主。ちょこまか動いて何しでかすかわからない幼児と変わらないとこあるから、目が離せない』

 


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