花びらの囁き 7

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 さらに悠が創るものもいつも人をはっとさせてくれるので目が離せないのだとも。
 そんな幼児を見知らぬ異国に行かせて大丈夫なんだろうか。
 高津がついているとはいえ、やはり心配の種が消えぬまま、藤堂は標準より絶対体重が足りないだろう悠を抱きかかえて寝室に運んだ。
「やっぱり、心配だよな、アイちゃん」
 ワインを飲みながら語りかける藤堂に、アイちゃんは、そうだね、というように、くうん、と鳴いた。
 土曜の夜もプラグインの面々はCFの撮影で追われていた。
 しかもところはほどほどに暖かくなりかけた三月の六本木。
 浮かれて遊びまくる若者を掻き分けながら、ようやく撮影を終えた藤堂と浩輔は、車を置いているパーキングへと歩いていた。
「遊ぶなとはいわないが。俺たちも学生の頃は羽目をはずしたいだけはずしていたわけだし」
 ぶつぶつと藤堂は口にする。
「俺の周りで遊ぶな、俺の周りから散れ!」
 隣を歩く浩輔が思わず吹き出す。
「やだなー、藤堂さん、どうしちゃったんですかぁ?」
 いつものほんわかペースが一日中見られなかった藤堂のその理由に、浩輔はだいたい見当がついていた。
「急ですねー、悠、月曜って明後日出発じゃないっすか」
「そうなんだ。それなのに準備もそこそこに、今日もコンビニでバイトしてるんだよ」
「でも旅行でしょ? 留学するわけじゃなし」
「十日間だけどね、まあ、いきなり成田から電話してきてイタリア飛んでっちゃうような突拍子もないことはできないみたいだが」
「そんな大昔のこと持ち出してあてこすらなくてもいいじゃないですかぁ」
 ようやくたどり着いた車の中で藤堂が言うのに、浩輔はぶーたれる。
「いや、実際留学したければした方がいいんだ。そのくらいできるだけのものはほんとはあるのにな」
 無論、悠が留学なんかしてしまったら、きっとあの部屋は火が消えたようになるだろうな。

 


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