サンタもたまには恋をする 32

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 二つ折りで封筒に入った案内状は、学生の個展にしては少々立派過ぎるかもしれない。
「やっと今日は動けそうだからな。どうしようかな、大学、直接行って渡してくるか」
 思い立ったら邪魔が入らないうちに、と藤堂は案内状の包みを持ってオフィスを出た。
 吉祥寺にある東京美術大学構内にある駐車場に車を停め、洋画科四年のアトリエが東の絵画棟の四階だと行きずりの学生から聞き出した藤堂は、久々に会う悠の仏頂面を思い浮かべてクスリと笑う。
 やっと悠の絵の実物を見られると思うとワクワクもする。
「あ、はい、五十嵐悠なら、ここ、ですけど」
 応対してくれた女子学生は美人だった。
 絵の具だらけのエプロンをしているのがアーティストらしい。
「高津、ハルちゃん、今日来てる?」
「あいつ、昨日から寝込んでるんだ」
 あれが高津、か、と髭面の学生を認めたが、「寝込んでる?!」と、愕然と口にする藤堂のところへ、高津がつかつかとやってくる。
「五十嵐くん、風邪が悪化したのか?」
「何だ? あんた」
 髭面は不躾にもジロリと睨む。
「銀河の藤堂だが」
「あんたが藤堂か! あいつここんとこしゃかりきになって描いてたはいいが、一昨日、ここで徹夜して、朝俺が来てみたら、高熱出してぶっ倒れてたんだよ!」
 藤堂が名乗るや今にも掴みかかりそうな勢いで高津は詰め寄った。
「それで、今、どこにいるんだ?」
「俺の部屋で寝てる」
 興奮気味に言い放った高津は「ちょっと、来いよ」と藤堂を促してアトリエを出ると、前に立ってたったか歩く。

 


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