サンタもたまには恋をする 34

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 灰色の空から、今にも大きな雨粒が落ちてきそうに雲はどんより重い。
 十一月も半ばを過ぎ、街路樹は風に吹かれて葉を落として舗道を黄色く染めている。
 窓辺にたたずみ、コーヒーをすすりつつ外を眺めている藤堂の目の先に、風に乗ってふわりと一枚葉っぱが宙に飛んだ。
「最後の一葉、なんて話、あったな……」
 はあ、とまた一つため息をつく。
「何だ、あいつは、うっとおしい」
 それを聞きつけた河崎は眉を顰めた。
「この忙しい時にギャラリーにかまけるのもほどほどにしろよ。」
「うるさいな、打ち合わせに遅れるぞ、とっとと行け」
 イライラと藤堂は言い放つ。
「部屋の方、家具はそろったんですか?」
 河崎が出て行くと、浩輔はらしくない落ち込みようの藤堂にそっと声をかけた。
「ああ……、さやかがくれたでかい冷蔵庫と、アパレルの女の子がくれたパイプハンガー、とりあえずベッドとパソコンだけは揃えたんだけどねー。データは無事でよかったよ」
 藤堂は力なく肩を竦める。
 さやかは元英報堂の同僚で、藤堂や河崎とは大学時代からのつきあいになるが、二人が辞めるのと前後して会社を辞め、今は通訳などをして悠々自適な生活を送っているらしい。
 時々このオフィスを訪れて勝手にコーヒーを飲みながら、暇つぶしをしていく。
「義行、焼け出されたんだって?」
 先日も藤堂の火事騒ぎを聞きつけてオフィスに来たさやかは、新しいネイルアートを見せびらかしていた。

 


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