「でも、高津くんと何かあったの?」
「高津の彼女が来て、俺がいつまで部屋にいるのか、って言ってるの、聞こえちゃって」
合コンで知り合った久しぶりの彼女だと、夏休みの終わり、高津が自慢していた。
「なるほどわかった。ただし、条件がある」
「条件?」
途端に悠の顔は不安そうに曇る。
「たいしたことじゃないよ。ここで絵を描くこと」
「へ?」
「先日、大学のアトリエを見せてもらったが、君一人で使えるわけじゃないから、そうたくさんの作品、描けないだろう?」
条件、と言われ、先だって藤堂に押し倒されたことが頭を過ぎり、よもや身体を云々、なんてことだったらと覚悟した悠だが、そんな条件ならむしろありがたい。
「汚れちまうぜ、床」
「カーペットでも敷こう。それともう一つ」
「まだあるのかよ」
「当たり前だ。ただほど高いものはないって、よく言うだろう」
にやり、と藤堂は笑う。
「な、何だよ、早く言えよ」
やっぱり、もしや、と、悠は顔をちょっと引きつらせる。
「俺が仕事でいない時、アイちゃんの散歩を頼む」
アイちゃんが、自分のことを話しているらしいと、ワン、と合いの手を入れた。
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