サンタもたまには恋をする 57

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 会期中、藤堂はついにちゃんと悠と話すことができなかった。
「絵もじっくり見られないじゃないか。今日こそは時間を作って行くぞ」
 あの絵には驚いた。
 いつの間に、と考えたが、パリから戻ってきたあの夜しか考えられなかった。
 可愛いことをする。
 全く、あの坊やには振り回されっぱなしだ。
 ただ、気のせいかと思ったが、どうやら避けられているようだ。
 パーティの晩も途中で悠はいなくなってるし。
 一度、朝、オフィスを出たところで、ギャラリーにやってきた悠と階段で出くわした時もそんな感じだった。
「お……いい作品展になったな」
「藤堂さんのおかげです。それから、絵、藤堂さんが買ってくださったんですね、社長から聞きました。ありがとうございます」
「あ、いや、あのな……」
「じゃあ、もう時間なんで」
 もっと話したかった藤堂だが、ぺこり、と頭を下げると、悠は妙に他人行儀な素振りでそそくさとギャラリーに上がってしまった。
「やっぱ、俺の考えを見透かされて嫌われたかな」
 あの絵を描いたのは、居候させた礼に、という意味なんだろうか。
 藤堂は一抹の寂しさを覚えたが、首を振って階段を駆け下りた。
 いくつかの作品は売約済みとなり、ギャラリーとしても、たかが無名の学生の個展としては破格の大成功としか言いようがない。

 


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