秋の陽8

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 ニアミス!?
 良太は眉を顰めながら苦笑する。
「今度は変顔の練習か? 夕方には戻る」
 また出かけるらしい工藤は怪訝な顔で傍を歩きしな良太に声をかけた。
「あ、あ、いってらっしゃい」
「工藤さん、相変わらず忙しいわねえ」
 仕事が終わった解放感からか万里子はのんびりと口にした。
「川崎だったんだ、あれ」
 万里子はまたさっきの話題に戻る。
「何か、でも、いいよねぇ、高校生とかに戻りたいなあ」
「万里子さん、高校生の時からドラマに出てらしたわね」
 鈴木さんが言った。
「そうなんだ。一年の時だけよ、高校生活満喫できたの、二年からこの世界に入っちゃったから。今でも思うのよ、あの時、スカウトの人に断ってたら、また違う人生だったんだとか。そしたら、ごく普通に高校生やって、大学も行って、普通にOLとかになって、普通に結婚してたなって」
「そうね、誰にでも岐路ってあるかもしれないわね」
 鈴木さんもしみじみとほほ笑んだ。
 鈴木さんの説によれば、その時から、俺の運命の歯車が回り始めた、ってんじゃないよな?!
 いつもの良太であれば、工藤と俺はやっぱ運命で巡り合ったんだ! とか、メチャ喜んでいそうなのに、と自分でも思う。
 だが、あまりな偶然に、戸惑ばかりだ。
 そういえば、もう思い出したくもないが、工藤がはめられて事件の被疑者にされてぶち込まれたが、関与したインテリヤクザがアジア圏の麻薬に厳しい国で大麻所持で逮捕され、終身刑かも知れないという新聞記事を読んだ時、ふと思ったのだ。
 もしこの会社に入社していなければ、ひょっとしてその終身刑が自分だったかもしれない!
 ぞっとした。
 もしあの時、工藤に会っていなければが、実はもう高校二年のあの時に決まっていたとか?????

 


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