秋の陽9

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 いやいや、人生ニアミスなんてもしかしたら誰でもあることかもしれない。
 ただそんな袖すり合ったくらいのことなんか、覚えていやしないのだ。
 第一工藤だって、あの時顔を合わせたことがあるなんて覚えてもいない。
 たまたま、俺が思い出しただけで。
 岐路って、この先まだあるんだろうか。
 そうだ、あの事件だって、もしか、千雪さんらがアクションドラマ並みに動いてくれたお陰で工藤が冤罪になるところを防いでくれたのだ。
 まあ、それがうまくいかなかったとしても、おそらくあの、工藤の影のボディガード波多野が、最終手段を用いて何とかしたのかもしれないが。
 やっぱりぞっとする。
 工藤がもし、帰らなかったらとか。
 もしこの先、岐路があったとしても、工藤と離れるとか、絶対いやだ。
 何だか結局、そこに落ち着いてしまった結論に、良太は一人笑った。
「やだ、どうしたの? 一人で思い出し笑い?」
 万里子が良太を見てにっこり。
「え、まあ、分岐点とかやっぱあるのかなって」
「そうねえ、でもそれってあとから思うことでしょ? そこで間違った選択をしたとしても、何とかいい方へ軌道修正していきたいよね」
「そうですよね!」
 万里子の言葉に良太は大きく頷いた。
「あー、やっぱり万里ちゃんだ」
 オフィスのドアを開けるなり、中川アスカは声を上げた。
 青山プロダクション所属の看板美人俳優である。
「アスカさん、お疲れ様です」
 良太がパソコンから顔を上げた。
「アスカちゃん、久しぶり!」
 万里子とアスカはハグすると、大テーブルのソファに仲良く座り、互いの近況を話しはじめた。

 


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