幻月12

back  next  top  Novels


 ところが若頭の息子では心もとないと思う島本組の息のかかった連中が想像をたくましくして、芦田組の一派が工藤を担ぎ上げるに違いないという理由で、工藤は既に数回襲われていた。
 そのたびごとに陰で動いてTが片をつけていた。
 だが、その一派が手法を変えて、今度は工藤を殺人犯に仕立て上げ、社会から葬ろうとしたということも考えられなくはないのだ。
「俺はどうなろうとかまうものか。それを認めたら俺は自分の嫌悪するヤクザと変わらないことになる」
 Tはどう片をつけたかは言わないが、それに対して工藤がそう言ったことがある。
「あなた自身ではなくあなたの大切な者に災いが降りかかるとしても、そんなことを言っていられますか?」
 Tのその言葉に、工藤は口を噤むしかなかった。
 確かに、良太は一本気な正義感から、工藤に何かあったとしたら突っ走るだろう。
 それは今までにも重々経験済みだ。
 工藤は現場を携帯の動画に収め、それを千雪に送り付けた。
「薬を盛られた、俺に濡れ衣を着せようという輩がいる。小田に連絡を取ってくれ」
 かろうじて警察が駆け付ける前に、動画も千雪に連絡を取った履歴も削除した。
 タレコミがあったらしく、警察がやってくるまでに時間はかからなかった。
 
 
秋山が麻布警察署に駆け付けると、入り口付近で良太がウロウロしていた。
「良太、工藤さんは?」
「会わせてもらえませんでした。でも小田さんが今接見しています」
 秋山と良太はそれから小田が出てくるまでじっと待っていた。
 やがて小田が出てきて言った。
「とりあえず、オフィスに行こう」
 良太は帰る際、一度振り返り、悔し気に唇を噛んだ。
 だが、ここで落ち着かなければ、何も進まないと良太は自分に言い聞かせ、三人はそれぞれの車で青山プロダクションへと向かった。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ