会社の前で三人を待っていたのは小林千雪だった。
「すみません、今、開けます」
良太はオフィスの鍵を開けて三人を招き入れた。
深夜のオフィスで、秋山、小田、千雪はしばらく言葉もなくソファに座っていた。
良太がコーヒーを入れて戻ってくると、秋山が言った。
「今はまだ俺と良太、それにアスカさん以外に社内の者にも何も言っていません」
「あ、一応軽井沢の平造さんには伝えるように工藤さんに言われたんで、伝えました」
千雪が言った。
「けど何で千雪さんに?」
良太は聞かないではいられなかった。
秋山も良太や秋山でなくなぜ千雪に連絡したのかということは疑問だった。
「おそらく時間がないと思ったんやないですか? こういう事件に慣れていることと小田さんともつながりがあるいうことで」
確かに、千雪の説明は一理あり、一応は二人とも納得した。
「いきなり現場の動画と『薬を盛られた、俺に濡れ衣を着せようという輩がいる。小田に連絡を取ってくれ』いうメッセージが届いたんで慌てて電話したんです」
三人は千雪をじっと見つめた。
「八時に下柳さんと『ブラン』で待ち合わせたが、携帯を忘れた下柳さんの伝言だと言って制作スタッフからセントラルハイアットホテルの『スマイル』に変更したという連絡が入った。『スマイル』で待っていると店に工藤さん宛の電話が入ったので移動したが、何も言わずに電話は切れた。カウンターに戻ると女がいて、自分のグラスの酒を一口か二口飲んだら朦朧としてきて、その女と店のスタッフに担がれてホテルの部屋に入った頃には意識がなくなっていた。気が付いたら、その女が血まみれで床に倒れていて、工藤さんの手には血の付いたナイフがあった」
千雪はそこで一息ついた。
「ざっと早口で工藤さんはそんなようなことを話して、小田さんと良太と平造さんに知らせてほしいと言って電話は切れました」
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