幻月19

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「はい、お願いします。俺だけじゃ、ほんと、どうにもならない」
 良太はまた唇を噛んだ。
「ああ、やっぱりいた!」
 そんな声とともにオフィスに入ってきたのはアスカと、その後ろからは平造が現れた。
「アスカさん、もう真夜中過ぎてますよ」
 壁の時計は午前二時を告げていた。
「工藤さんのピンチにおちおち眠れるわけないじゃない! そこで平造さんに会ったのよ」
 秋山の険しい表情も何のそので、アスカはコンビニで調達したらしいおにぎりやサンドイッチを持参していた。
「作戦会議は終わったの? 工藤さん、いつ出てこられるの? いったい何がどうなってるのよ!」
 アスカはまだ壁の大型モニターに映し出されたままの画像を見て、矢継ぎ早に問いかけた。
「千雪さんと京助さんが、警察よりも迅速に動いてくださっていろいろ情報を教えてくださったんです」
 秋山が端的に説明をした。
「平造さん、軽井沢から飛んできたんですか? すみません」
 良太は平造をソファに促した。
「久々、高速なんか走ったからちょっと疲れたくらいだ。どうなっとるのか、話してくれ」
 老体に鞭打つとはこのことだ。
 良太は今までの経緯とこれからどうするかをかいつまんで話した。
「平さん、お久しぶりです」
 京助と二人、先ほどからひそひそと話し込んでいた千雪が平造を見てにっこり笑った。
「皆さんも、社長のために申し訳ないことです」
 平造は頭を下げた。
「とんでもない。いつも工藤さんにはお世話になってばっかやし、こんな時こそ力にならせてもらわんと」
 出会ってからほぼ十年来の付き合いになる老人に、千雪は労りの目をむけた。
「ちょっと休みませんか」
 良太はアスカが持って来てくれた差し入れをテーブルに広げて、お茶を用意し、皆を呼んだ。

 


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