幻月27

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「いえ、ちょっとお腹冷え気味で」
「久しぶりじゃない。ほかの仕事忙しいの? あれ、何か探偵が活躍するドラマ、やってるんでしょ?」
 良太は苦笑いした。
「まあ、探偵、ってか、弁護士なんですけどね」
 『からくれないに』のことなのはわかるが、原作者が名探偵小林千雪とか、ネットの記事などに書かれたりすることがあって、そのあたりが混同されがちのようだ。
「あたしもそういう、正義の味方、みたいなのやってみたいな」
 竹野がボソリと言う。
「正義の味方、ですか。そのうちやれるチャンスあるんじゃないですか? そういうキャラも今までにない竹野さんの視野が広がるきっかけになるかもしれませんね」
 今の良太にとっては、その正義の味方、しかも超能力で何でもわかってしまうようなスーパーマンがすぐにでも現れてほしいところだった。
 工藤がどうしているか、何を考えているか、気にならないことがない。
 何かの拍子にどうしても考えてしまう。
 今までにも遠くヨーロッパ辺りを工藤がうろついていることなんかいくらもあったのだが、顔を見られない、声すら聴けないだけでなく、連絡が取れない、というのが一番きつい。
 さすがの工藤も、今回のことでは参っているのではないかと思ってしまう。
「何か心配事?」
 良太は竹野を振り返る。
 そんな顔をしていたのだろうか。
「まあ、いろいろ、夕方の打ち合わせのこととか」
「新しいドラマ?」
「いえ、CMなんですけどね」
 そう、港区芝にあるMEC電機の広報部で四時からCMの打ち合わせが入っていた。

  

 


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