「ありがとうございます。よろしくお願いします」
まさか谷川がそこまでやってくれるとは、良太も思っていなかった。
「へえ、そうなん? 確か奈々ちゃんのマネージャーやろ?」
千雪がちょっと目を丸くして聞いた。
「ええ、ボディガードとしても力を発揮しててくれますし、きっちりしてます」
「そら、なんやな。俺、そんな人の前で、思い切り警察の罵詈雑言言うてもたで」
そう言って笑う千雪につられて、良太も笑った。
「ですよね~。まあ、うちの社員はみんなわけありなんで」
「俺らは引き続き田口紀佳と友成の周辺調べてますんで、また情報上がったら連絡します」
千雪は小田にそう言った。
「よろしく頼む。だが、くれぐれも無茶はしないように」
「わかってますよ。法律に触れないようにうまくやりますよって」
しれっと言う千雪に対して、小田は苦笑いした。
「あの、先生、工藤さんに知らせてほしいことがあるんですが」
良太は波多野のことを思い出して少し緊張しながら言った。
「明日も接見に行く予定だが」
「仕事のことです。フジタ自動車は俺が打ち合わせ行ってきました。あと、MEC電機から奈々をCMで使いたいという連絡が入り、プラグインの藤堂さんと一緒に打ち合わせを済ませました。こちらに詳細はありますので、この二つをお伝えいただきたいんです」
「確かに承った。しっかり伝えておくよ」
小田は少し眉を顰めてじっと良太を見つめながら言った。
「会社は君にかかっているからね。もちろん無理をしない程度にとにかくよろしく頼むよ」
念を押すように小田は言うと、一人また頷いた。
良太と千雪は事務所を出ると、階段を降りて駐車場に向かった。
「千雪さん、友人の方が、警備会社に潜り込んでるって?」
ヘルメットをかぶろうとした千雪に、良太は聞いた。
「ああ、それな。小田先生の前やからそない言うたけど、ダチの知り合いでな、ほんまはハッキングや。かなりの使い手やから足がつくようなことはない思うけど、どやろ」
「え、それでいいんですか?」
呆れて良太は聞き返す。
「それはそいつの問題やしな。今回、四の五の言うてられへんから」
千雪は平然と答えた。
「なあ、良太、ひょっとして」
「はい?」
「例の影の男て、MEC電機の人?」
「え?!」
驚いて良太は取り繕う間もなかった。
「男の写真に、急に入ったCMの仕事、良太、丁寧に工藤さんに伝えてくれて真剣やったから」
さすが名探偵というべきか。
「あ、でも、ちょっと、詳しいことは………」
「わかってるて。言わんでええ」
「ただ、千雪さんに真犯人に辿り着いてほしいって言ってました。まあ、勝手な言い分ですけど。千雪さんが早々に動いていることも知ってました」
「そうか。とにかく通用する証拠か真犯人が必要やからな」
千雪はヘルメットをかぶり、バイクのエンジンをかけた。
「また連絡するわ」
「俺も。よろしくお願いします」
バイクが走り去ると、良太も車を出した。
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