幻月34

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「そうやってすぐ短絡的な結論に飛びつく。全くヤクザの下っ端の勇み足と変わりませんよ」
 良太はカッときたが、波多野の指摘はもっともかも知れない。
「そういうバカなことは考えなくてもいい。いいですか、あなたの仕事は、工藤さんのことで動こうなどと金輪際考えず、会社を守ることです」
 断言された良太はぐうの音も出ない。
 すると波多野はフン、と鼻で笑う。
「あなたはおかしな人だ。私にこんなことをぺらぺらと喋らせる。とにかく、こちらも徹底的に調べますが、いち早く動いている小林さんが真犯人に辿り着いてくれさえすれば……」
 波多野は立ちあがって窓の方を向いた。
「小田さんから、今の仕事の状況と同時にMEC電機のCMが入ったと、工藤さんに伝えるように言ってください」
 おそらくそれで工藤は、波多野が動いていることを知るわけか。
「わかりました」
 良太は神妙な顔で言った。
「ではプラグインの藤堂さんがいらっしゃるまで、しばらくお待ちください」
 声の抑揚を変えもせず、波多野はそう言いおいて部屋を出て行った。
 窓の外にはよく晴れた秋空が広がっていた。
 良太は窓際に立って街を見下ろした。
 まだまだ残暑は続くだろうが、やはり夏は確実に過ぎつつある。
 蒸し暑い京都の街を工藤と歩いたのはついこの間なのに。
 また、工藤とロケに行ってああでもないこうでもないと言葉をかわせるようになるんだろうか。
 いや、工藤がちゃんと仕事に戻れるんなら、俺がそこにいなくたってかまやしないんだ。
 俺がいなくなることで、工藤が戻れるんなら。
 工藤が帰るまではきっちり会社を守ってみせるさ。
けどさ。
 バカなことは考えなくていいって、じゃ、俺、どうしたらいいんだよ。

 


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