新宿通りに面した半蔵門にある七階建てのビルの二階が小田弁護士事務所である。
良太は一階の駐車場に車を停め、車を降りようとしてまたポケットの携帯が鳴った。
今度はラインで、相手は波多野である。
仕事上のやり取りに便利だからと、藤堂とともに波多野とラインの登録をしたばかりだった。
いくつかのファイルと画像が送られてきたが中に一つ妙な画像があった。
夜、どこかビルから出てきた黒ずくめの男の画像である。
「何? これ……」
最後に波多野から、先ほど渡された書類への追加でという説明の間に、画像の番号と、事件のあった夜、工藤が部屋に行ったとされる三十分ほど前の時刻、ホテルから出てきた男を千雪が得た情報として小田にホテルの防犯カメラを調べさせろというような内容が混じっていた。
三十分前ってどういうことだ?
そこへバイクの音が近づいてきて、千雪が降り立つとヘルメットを取った。
「どないした?」
携帯の画面を睨み付けている良太に、千雪が声をかけた。
良太はその画像を千雪に見せると、波多野からの説明をした。
「これって、誰から?」
「例の男です」
千雪は良太の言葉ですぐに察してくれたようだ。
「なるほど、わかった。俺のダチが集めた情報やいうて、小田さんに調べてもらうわ」
ヘルメットをぶら下げて良太の後から階段を上がりながら千雪は続けた。
「こっちも、一つ妙な情報が入った」
「妙な情報?」
二人が事務所を訪れると、所長室に通され、調査員の遠野譲がコーヒーを出してくれた。
「工藤は元気だったよ。まあ面白くないのは当然だが、あの強靭な精神力の男だからな、今のところ否認と黙秘を続けている」
小田は言った。
「ところで一緒に行動していたのかい?」
「いえ、そこで会ったんです。千雪さんから何か情報があるらしくて」
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