幻月44

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 とにかく時間が限られている。
 何とか、糸口を掴むことができれば。
 小田はいつの間にか眉間に皴を寄せていた。
「先生、怖い顔になってますよ」
 デスクにコーヒーを置いて安いが言った。
「ああ、ありがとう」
 安井や遠野も工藤が会社を興した頃からの付き合いだ。
「絶対、真犯人みつけますから!」
 工藤、お前、自分が思っている以上に周りの人間には恵まれているぞ。
 小田は広くなった額を癖で撫でてから、コーヒーをぐびりと飲んだ。
「先生、青山プロの鈴木さんからお電話です」
 鈴木さんがわざわざ電話をかけてくるとは何だろう、と怪訝そうに受話器を取った。
「そうですか。わかりました。私もそちらに向かいます」
 小田は電話を切って立ち上がった。
「何かあったんですか?」
「警察が会社までやってきて、工藤の部屋を引っ掻き回しているらしい。まあどうせ、何も出やしないがな」
 良太も出払っていて、鈴木さんが一人らしかった。
 オフィスに着くと、ちょうど刑事が二人、工藤の部屋から降りてきてオフィスにまた立ち寄ったところだった。
 滅多なことでは狼狽えることもない鈴木さんだが、彼女にしては怒り心頭といった目を二人に向けていた。
「何か、出ましたか?」
 年配の刑事と若手の刑事の二人組は小田の顔を見るとあからさまにムッとしたような顔をで頭だけ下げた。
「ちゃんと元通りにしたんでしょうね?」
 小田が去っていく二人に声をかけたが、返答もなかった。
「工藤が無言を貫いているんで、出向いてきたんでしょうが、何も出るわけがない」

 


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